決断する経営者は、メタルスライムを倒して強くなる
ウェルプレイド・ライゼスト / 代表 谷田優也
そもそも、eスポーツビジネスでどんなことをしていくのかという点で悩みました。
大会を開催して、お客さんにチケットを買ってもらったり、スポンサーについてもらったりして収益をあげるのが、ごく一般的な発想になると思います。僕自身、起業前からeスポ―ツイベントの企画や運営を行った経験がありましたが、開催頻度、規模、ゲーム開発会社の戦略、などに大きく紐づくため、この売上だけで会社を拡大していくことの難しさはあると痛感しました。
イベント会社にはゲームのことが、ゲームプレイヤーにはイベント企画から運営までのことが、互いに詳細にはわからないという溝が存在していることには気付いていたのですが、実際どんなビジネスモデルで事業をスケールさせていくのかまではみえていませんでした。
他の業種であれば、近い業界から課題解決の方法や仕組みづくりを参考にできるところでしたが、eスポーツ業界に関しては、googleで検索しても、本屋に行っても、どこにもそのヒントがなかったので、そこが1番の壁だったのかもしれません。
誰も着手していない領域だからこそ、やったらやっただけ道になるという気持ちがあったので乗り越えられたと思います。大抵のトラブルはどうにかするかしかないと思っているので、トラブルを失敗だとは捉えていません。
そのうえで、メーカーの抱える悩みをどう解決していくのかを考えていました。そこで、最初にビジネスのヒントとして着想を得たのが、ゲームの仕組みの変化です。昔は一度お金を払ってゲームを購入したら、「折角だしエンディングまではやろうか」といったように、ゲームをやり続ける理由が必然と生まれていました。しかし、今はクオリティの高い無料ゲームが数百、数千と溢れているので、同じゲームをやり続ける理由がなくなってきています。
そんな時代において、デイリーアクティブユーザーを重要視するゲームメーカーの目線になったときに、メーカーは手に取ってもらう理由ではなく、遊び続ける理由を作るマーケティングにずっと頭を悩ませているというのがみえてきました。 そこで、eスポーツがゲームを継続する理由になり得るという理屈を、全ゲームメーカーに説明していきました。
NetflixやYouTubeの全コンテンツを見ることはできないし、それでも隙間時間にTikTokを見てしまうといった、可処分時間の奪い合いの激しい時代の中で、ゲームを続ける理由を1つでも多く作る提案ができたのが、突破口だったと思います。
ゲーマーが称賛される世界を日本でも実現するという起業当初の目標でいうと、実はかなり達成できています。今年の6月に初めてオリンピックとeスポーツの名前を横並びにした大会をIOC(国際オリンピック委員会)が主催したり、日本のYouTubeで投稿されている動画全体の約25~30%がゲーム実況になっていたりと、ここ8年でゲームプレイヤーを称賛する世界も、観戦して熱狂する世界も完成系に近づいてきたように思います。
そこで、もう少し未来のことを考えてビジョンやありたい姿をアップデートしようとなったときに、行き着いたのがeスポーツの総合商社です。
最近では、ゲームが好きでよかったと思えるライフスタイルに必要なプロダクトを全部作りたいと考えています。具体的には、学校教育の中でゲームを使って勉強することが選択できるようになったり、 高齢者がゲームを使ってリハビリができるようになったり、人生を通してゲームを楽しめる世界を実現したいです。
加えて、今は隠れているニーズを先回りして掘り出していき、それを満たすプロダクトをどんどんクリエイトしていきたいとも考えています。
ゲーミングライフスタイルカンパニーというビジョンを掲げた企業が上場して、こういった取り組みを行なっていくことの意義を、5年10年かけて体現していきます。