起業で人工物である世の中に変化を
クラスター株式会社 / 代表取締役CEO 加藤直人
まず、世の中は誰かが作っている”人工物”であると意識するようになったことです。私たちは、色々な法律や社会システムに従いながら、『しょうがない』と思いながら生きていたり、なんだったら『しょうがない』ということにすら気づかず生きていると思うんですよね。なんとなく満員電車に乗って通勤するみたいな行動自体も、誰かによって社会に組み込まれた”人工物”であるということが、どれくらい理解できているかがすごく大事だと思っています。
そして、その構造物やアーキテクチャというのは、大きいものであればあるほど、作るのにも改善するのにも、時間と人手とお金が必要となってきます。つまり、この「時間や人やお金をどう集めていくか」が非常に重要なんです。ヒト・モノ・カネを集めてやっと、より大きな言葉、より大きな仕組み・システムを作ることができるんだ、それによって、世の中を少しずつ変えていくことができるんだということを、知ることができたのが、会社を作って1番得られた学びかなと思います。
最も重要な能力は「没頭する力」です。寝るのも食べるのも忘れて没頭し続けられ、努力を努力と思わないくらい没頭できるのが大切です。これはどんなプロフェッショナルになるにせよ、必要不可欠な能力だと考えています。
起業家の場合、事業を成り立たせて、そして大きくしていくためには、学ばなければいけないことが山ほどあります。ファイナンスや会計、マーケティング、ピープルマネジメント、法律など、挙げればキリがありません。こうしたことを学ぶときに、勉強そのものが苦痛だとやはりしんどいので、どれだけ楽しめるか、没頭できるかが1番大事だと思います。
もうひとつ重要な能力を挙げるとすれば、「巻き込み力」です。これは、相手の人生を変えてしまう巻き込み力のことで、ただ相手に共感させたり惹きつけたりするというのは、巻き込みとしては30点くらいだと思います。人を雇ったり、投資してもらったり、お客さんにお金を出してもらうということは、その人の生活や人生を変えているわけなので、 そういった意味での巻き込み力がすごく大事です。
ちなみに、最初の社員ふたりは、まだ投資が完了していない段階で仕事を辞めてもらい、東京に来てもらったんですよ。
まさにそうです。
人生通してずっと没頭し続けられる人が、プロのプレイヤーになるものだと思っています。大谷選手や藤井八段のようなスーパープレイヤーは、僕の言葉で言うと、ある種人生を通してずっと”勘違い”し続けているのかもしれないです。自分はもうこの領域のスーパープレイヤーだって勘違いし続ける。でも、その勘違いがずっと続いたら本物になるわけですし。そういう能力が1番大事なんじゃないかなと思っています。
繰り返しにはなりますが、世の中のほとんどのものは人工物で、自然のまま残っているものは少なくなっています。金融システムや建築物、法律や歴史など、すべて”人間が作り上げたもの”です。つまり、これらは誰かが”作った”ものである以上、人間の手で変えることができるのです。これが、今の世界の本質だと思ってます。
この前提を踏まえてお話しすると、特に若い人たちの多くが、政治を通じて世の中を変えることに対して、希望を失っていると感じます。たとえ投票しても意味がないのではないか、という思いがあるのでしょう。そうした状況の中で、現存する世の中を変えるための手段として、起業は最も効率的で魅力的な方法だと考えています。
今の社会システムやアーキテクチャに対して不満を抱えている人たちには、ぜひ起業という手段を使って、世の中を変えていってほしいと願っています。