起業で人工物である世の中に変化を
クラスター株式会社 / 代表取締役CEO 加藤直人
私は、京都大学大学院を中退した後、3年くらい京都に引きこもっていたんですね。ただ、ネガティブに引きこもっていたというよりは、外に出るのも忘れてインターネットに夢中になっていたんです。知り合いからソフトウェア開発の仕事をもらって、家にいながら生活費を稼ぐ生活を送っていました。
プログラミングでものを作るのがすごく好きだったんですけど、そうしているうちに、あるひとつのゲームエンジンにハマって、それに関する本やブログを書くようになりました。そのブログ経由でVCから『出資するから、会社を作って世の中のためになるサービスを作らないか』と声が掛かったんですね。そこで起業に現実味を帯びたというのがきっかけになっています。実は、『起業しないか』と言われて起業したというような形でした。
やはり私自身が社会人経験者ではなかったので、社会人メソッドを何も知らない状態で起業したんですね。なので、「cluster」というサービスができるまでは、やはり不安が大きかったです。どういうものを作ったらいいのか、どう事業を作ったらいいのか、1円の稼ぎ方すらわからなくて。すごく悩みながらもがいていました。
そこで、できるだけ多くの起業家や投資家に会うことにしました。その度に、こんな事業・プロダクトを作っているというピッチをして、アドバイスもらったり。引きこもっていたときは、年間で10人くらいしか会わなかったのが、1日で新しい人に10人以上会うみたいなのが毎日続くようになりました。とにかく人に会ってどんどん新しいことを吸収していったのが、起業して最初の半年から1年間くらいでした。
エンジェル投資家に、mixi創業者の笠原さんがいるのですが、ちょうど「cluster」のアルファ版を出す日に初めてお会いしたんですね。『今日の夜こんな感じで出すんですよ』って言ったら、その夜、アバターが集まる空間に、笠原さんがいらっしゃって、そのタイミングで投資をお願いしたという経緯があったんですね。
そんな笠原さんから聞いたのが、「強固なカルチャーを創ること」でした。よく知られているように、mixiってすごく盛り上がった後、急激に失速したんですよね。Twitter(現:X)やFacebookが日本に入ってきたときに、mixiからどんどん社員が離れてしまった理由のひとつに、「強固なカルチャーが創れていなかった」という振り返りをされていたんです。会社が大変なときに、人を繋ぎ止めておくことができなかったと。
そんな話を聞いて、クラスターもカルチャーをしっかりと創ろうということで、11箇条を定めて大事にしています。何か迷ったり、大変なときの指針になるようなものを、しっかりと言語化しておこうと。特に、我々はカルチャーとして「加速」という言葉をすごく大事にしていて、やはりブレーキをかけたくなるときってたくさんあると思うのですが、そういうときこそ『果敢にアクセルを踏もう』ということを強調しています。そういうカルチャーをしっかりとインストールしていくというのは、mixiの笠原さんがきっかけです。
これはすごく単純な話で、「どれだけ外に向けて、ミッションやカルチャーを恥ずかしがらずに連呼しているか」だと思います。
クラスターは、「人類の想像を加速させる」というミッションと、「バーチャル経済圏のインフラを作ろう」というビジョンを掲げているのですが、コアなユーザーたちは、多くがこれらのミッション・ビジョンを知っているんですよね。これって、結構異常なことだとは思っているのですが、会社のミッション・ビジョンを、こういうインタビューやイベントでも発信するのを繰り返しているうちに、 ミッション・ビジョンに対するフォロワーの増加と定着に繋がっています。
1番大切なことは、恥ずかしげもなく何度でも連呼することだと思っています。