自分たちにしか勝てない土俵をつくる 〜Chatworkからkubellへ〜
株式会社kubell / 代表取締役CEO 山本正喜
色々なものが非合理だったりバイアスがかかっていたり、この社会はかなり歪んでいると思っています。そこに対して、『社会や世界はこうあるべきだ』という自分なりの価値観や信念を持って活動することが、アントレプレナーシップだと考えています。会社を作るのも1つの手段だとは思いますが、NPO法人や民間企業でも、自分が信じる世界観を現実化させる精神やスタンスを持っていれば、それも起業家精神と言えます。
私自身、それを『働くをもっと楽しく、創造的に』という当社のミッションに込めています。仕事は本来めちゃくちゃ面白くて楽しくて創造的なものであるはずなのに、そうなっていない人が多すぎるというのが、私にとって違和感がありました。『みんなどうして人生の大半をつまらなそうに働いてるんだろう』と疑問に思うところがあって、この状況を変えたいというスタンスがあるから、今でも働いているんだと思います。働くことが楽しいと思える人を1人でも増やしたいですし、自分の子どもが大きくなったときにいい社会を残したいというのが、自分自身の原動力になっています。
色々な経営者のタイプがあるとは思いますが、私は「自分のミッションに対して真摯であること」だと思います。綺麗事に聞こえるかもしれませんが、社会性のあるミッションを立てて、そこに対して忠実であることで、社会的リソースが集まるんですよね。反対に、本心として『お金持ちになりたい』とか『有名になりたい』という承認欲求ドリブンな人は、簡単に見透かされてしまうので、お金や人は集まりません。
成功の定義を、ある程度大きな社会的インパクトを生み出すことだと捉えると、社会性の高いミッションに対して純粋に向き合う資質がなければ、会社の成長は一定のところで止まると思います。繰り返しにはなりますが、これは決して綺麗事ではなくて、先ほどのロジックで説明できる通り、この資質がないとリソースが集まらないので、うまくいかないんです。
必要なスキルは色々ありますが、それらはフェーズによると考えています。初期の頃は、営業だったり採用だったり、なんでもできなければいけないと思いますが、だんだん規模が大きくなってくると、足りないスキルを外部から補うことが可能になります。つまり、必ずしも社長のスキルが高い必要はないんです。
その前提で必要なスキルを挙げるのであれば、会社の規模が大きくなればなるほど、「言語力」が大事になってくると思います。たくさんのステークホルダーがいる中で、その人たちのベクトルを揃えるためには、抽象的なコンセプトを言語化をする必要があります。
そして、言語化するときにどんな言葉をどういう抽象度で伝えるのかが、非常に重要になってきます。具体的すぎても、抽象的すぎてもダメですし、言葉としての引っかかりも必要ですし、コピーライティングに近い言語化能力はものすごく大事ですね。私自身、言葉にものすごくこだわるタイプの経営者だと思います。
今は非常に起業がしやすい時代だと思います。私が起業した20年前は、「起業家=就職できなかった人」といったアウトローのイメージが強く、”新卒のルートを逃すと元には戻れない”という、社会の規範が今よりもっと強かったんですよね。ただ、今ではまったくそんなことなくて、起業経験のある人を採用したがる企業はたくさん存在するので、たとえ起業で失敗したとしてもキャリアの離脱にはなりません。
その一方で、今学生起業で成功できるかというと、かなり難易度は上がっていると感じています。起業がすごく大変なことや、ほとんどうまくいかないことを理解したうえでなお、起業したいのであれば挑戦してみてもいいと思います。
私としては、日本には『社会を変えたい』と思う人がもっと必要で足りていないと思うので、その意味で起業家は日本の宝だと思っています。実際、個人的にもエンジェル投資をするなど、応援をしているのですが、そういう人材がもっと出てくることを願っています。若いうちは、どんどんチャレンジしてみてください。
撮影場所:WeWork 乃木坂