何があっても曲げない信念を持っているか
株式会社ウエディングパーク / 代表取締役社長 日紫喜誠吾
大きく分けると2つあり、その両立が大きな課題でした。
ひとつが、ユーザー向けに提供したクチコミサービスへのウエディング業界からの逆風が想像以上に強かったことです。ユーザーの方々からは、『こういうサービスを待っていた』という声をいただいてたのですが、業界の方々からはクレームの嵐で、社員も不安になっていくという負のスパイラルが起きてしまいました。
もう1つは撤退基準が明確にある中で、早くビジネスとして成り立たせないといけなかったことです。今振り返ると、経営の厳しさをスタートから体感できたという意味では、とてもいい経験だったのですが、当時はまだ経験も薄かったので、しっかり売上を立てて利益を出すということの難しさを痛感しました。いわゆる1円の売上の重さを本当の意味で知ったわけです。
売上にしても、利益にしても、結局ユーザーの皆さんから支持を受けないことには事業は成り立ちません。信念を持ってクチコミを守り、事業として成立させるかが、壁を乗り越えていくうえで非常に重要なポイントでした。
具体的には、当時は毎日夜の10時に、私自身で全国から集まってきたクチコミを1個1個見て掲載の承認をしていました。全部目を通すことを自分のミッションにしていて、毎日何百件も見ていると、日を跨ぐこともあったのですが、それを5年間やり続けました。その中で、クチコミを望んでいる方がすごく多いということに確信が持てて、クチコミがもっとオープンになっていくことが、世の中のためになっていくんだと、どんどん信念が固まっていくような感覚はありました。色々なクレームに対しても『ここで負けてはいけない』という使命感でぶれずにこうあるべきだと伝え、やり切れたのだと思います。
例えば、売り上げが苦しい中で『発注するから悪いクチコミを消してほしい』といった声もあったのですが、1度でも許してしまうとクチコミの意義がなくなるし、社員にそういう姿勢を見せてはいけないと思ったので、自分の信念をぶらさず向き合いました。結果、 クチコミサイトとしてより信頼度が上がり20年以上続くサービスになりました。
はい、その通りです。
サイバーエージェントの藤田社長から期待されて、社長を引き継いだわけですが、やはりそこで信念を曲げてでも数字を作ろうとしていたら、きっと今はないと思っています。当時は周りがどう言おうが、自分が今信じられることをしっかり貫いていく中で、結果、周りの方々にも幸せになってもらえる「三方よし」を追求していました。
書籍(『僕が社長であり続けた、ただ一つの理由』)に詳しくは書いているのですが、事業撤退の期日が訪れた時、なんとか事業を継続してもらえないか藤田社長に「Wedding Park」の意味意義、そして自分の覚悟をプレゼンしました。クチコミサイトとしてメディアの信用は上がっていましたし、ユーザーからも評価いただいていました。ただ、売り上げがついてこなかった。これは自分の責任ですが、なんとかチャンスをもらえないか自分の思いの丈を懸命にプレゼンしました。そして、異例の対応として撤退期日を延長してもらえたのです。あの時に期日に合わせることを優先して、売上だけのことを考えていたら、恐らく経営者としての信頼は失ったんだろうなと思います。