「崖から飛び降り、落ちるまでに飛行機を組み立てる」
株式会社Seibii / 代表取締役社長 千村真希
自動車整備業界は、いま本当に激動の時代です。まず整備士不足が深刻化する一方で、AIや電気自動車、コネクテッドカーといった新技術がどんどん世に出てきています。また、お客様の要望もかつてのような「車は持ち込みが当たり前」から「もっと手軽で、しかも透明性のある整備サービス」を求める方が増えているんですよね。そこに日本特有の人口構造の変化まで重なっていますから、まさに課題の塊ともいえます。
しかし僕は、課題が多いということは裏を返せばチャンスでもあると思うんです。整備士をどう確保するか、あるいは既存の整備士さんがもっと働きやすい環境を整えるにはどうすればいいか。新技術に対応できる人材をどう育成していくか。お客様が「整備ってこんなに身近なんだ」と思えるような体験をどう作っていくか。こうしたテーマに取り組むことは、社会的インパクトも大きいですし、やりがいも非常に大きいです。Seibiiとしては、ITで効率化しながら、出張整備やスキルシェアを普及させていくことで、「整備の常識」を少しずつupdateしていきたいと思っています。実際に、2021年から出張整備に関する規制緩和の重要性を発信し続け、2025年6月には法改正が実際に行われることになりました。
僕は「ハングリーで、愚直に積み上げながらリスクを取ること」だと考えています。特にスタートアップの場合、ある程度ハードルの高いリスクを負わないといけません。検討に検討を重ねても、最後は「やってみないとわからない」部分が必ず残る。そこで踏み出せるかどうかが勝負ですよね。上手くいかなければ修正して、またチャレンジを続ける。そんな“愚直”な積み上げを繰り返すエネルギーが極めて重要だと思います。
もう一つ大切なのは、自分より優秀な仲間をどう巻き込むか、という点です。「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」と言う名言がありますが、まさにその通りだと思っています。整備士の方やお客様、スタッフ、それから出資してくださっている投資家さんなど、多くの力を貸してくださる方がいる。僕がやらなきゃいけないのは「こういう形で業界を変えていこう」「こんな社会を実現したい」という思いをしっかり共有することなんです。
まず、起業は決して楽な道じゃないです。むしろ困難のほうが多いし、不確定要素も山のようにあります。でも、それを「面白い」と思える人や、どうしても「やりたい!」と思う何かがある人は、ぜひ一歩踏み出してみてほしいんですね。やらないで後悔するより、やって失敗したほうが圧倒的に得るものは大きいですから。
僕自身も大学時代に野心的な行動をとってみたこと、それから商社として様々な案件を経験したことが、のちに起業につながりました。そう考えると、いま学生さんがインターンシップに挑戦するのも、ボランティアをするのも、留学するのも、全部が将来の選択肢を広げる種になると思います。実際、Seibiiにもインターン生が出入りしていますが、若い人の行動力や柔軟な発想にはこちらが学ばされることばかりです。
「崖から飛び降り、落ちるまでに飛行機を組み立てる」ような状況は、起業においては当たり前かもしれません。でも、それこそがやりがいでもあるし、自分の成長を促す原動力になるんです。だからこそ、学生のうちに得られる貴重な時間を存分に使って、「これが自分の大きな挑戦だ」と言える何かに向かっていってほしいなと思います。
自動車整備の世界が気になる方はもちろん大歓迎ですし、それ以外の分野でも「ハングリー精神」を発揮して新しい挑戦をする人が増えることを、僕は心から願っていますね。