自ら新しい仕組み、知を生み出す
株式会社リバネス / 丸幸弘
東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻博士課程を修了。
大学院在学中から教育とビジネスに興味を持ち、学生団体Business Laboratory for Students設立に関わる。
そこで得た全国の学生ネットワークをもとに、世界で初めてのバイオ教育のベンチャー、有限会社リバネスを理工系大学院生のみで2002年に設立。
2004年には増資し株式会社リバネスに組織変更、代表取締役に就任。多数のバイオベンチャーの立ち上げを手伝い、役員や顧問を務める。
教育に熱い想いを持つ、株式会社リバネス社長、丸幸弘様のインタビュー記事です!
是非ご一読ください!
バックオフィスを除くすべての社員が理系で、修士号取得者が40%、博士号取得者が60%です。マニアックな人が多くて、いつも論文を読みながらご飯を食べています。
理系と文系の違いは自分でやるか、仕組みを作って外部の人を使うか、だと思っています。もちろん両方とも大切ですけれども、僕らは技術を持っているので、どんなものでも作ることができます。できないことはないんですよ。タイヤからエンジンまで自分たちでデザインして車だって作ることができます。ウソみたいに聞こえるかもしれないけど、家や空飛ぶ車なども作れちゃうんです。
もちろん、僕らは製造業ではないので、工場は持っていません。でも例えば、薬を作ろうとしたとします。薬を作る際に必要な工場は世の中にもうたくさんあるので、そのために工場は作る必要はないんです。工場のラインに自分たちの知財を乗せれば自分たちの薬が作れる。それを使ってビジネスするだけです。ものを作るのではなくて、知識を作って売る。僕らはそういう仕事の仕方を「知識製造業」って呼んでいるんです。
僕らのやっているビジネスは簡単で、「Scienceをわかりやすく伝えること」。Scienceはもちろん世の中の発展に大切なことですが、そんなこと抜きにとっても面白いものなんです。僕らはその面白さを知っているので、Scienceが好きな人が減るのがもったいないと思っています。だから、最先端の科学を伝えるっていうのが10年前に初めて僕らがやった仕事なんです。具体的には、Scienceが好きな仲間を増やすために出前実験教室を始めました。
そこでわかったことは、時代に合わせて最先端技術はどんどんかわっていくのに、教科書はぜんぜん変わってない。今の最先端技術なら1日で解析できる量のDNAも、5年前の技術では解析するのに10年必要でした。それをまだ教科書では10年かかるって教えているんです。つまり、学校で学んだ知識と現実にズレが生まれてきているんです。今、教育の現場にはそういった矛盾がすごく生じている。それを変えられるのは僕らの活動だけだったんです。ニーズがあるから絶対に世の中が自分たちのサービスを認める。そう思っていました。そうしたら案の定、理科の先生から依頼がくるようになったんです。学校の教育にこそ最先端の科学が必要なんですよ。先端技術を見せることで学校の教育と先端技術のギャップを学生に感じさせる。そうすると学生は燃える。勉強に力が入るようになるんです。国体を目指す選手はオリンピックには行けないですよね。国体を目指していたら日本の中での勝負にしかなりません。学生にオリンピックのレベルを見せる。学生の上位層を持ち上げていかないと、日本はもう他の国に飲み込まれてしまいます。
普通の会社ではおそらく入れないと思います。なぜなら物を売って利益を得ているから。うちの会社が教育の場に入り込めたのは、売り物がないからです。Scienceって素晴らしいんだよって伝えることをサービスにしたからだと思いますね。出前実験教室ってScienceを伝えて仲間を増やす活動なんです。そしてもちろん子供の好奇心も高めます。それがビジネスとして成り立つし、科学という強みを活かすことができるんです。この仕組みは面白いビジネスモデルだということでシンガポールでもやっているし、アジアでも注目されています。
僕らの強みは、Scientistだけが集まっていて、Scienceが好きってことだけです。だからたくさんの仕事をやっていますが、どの仕事もScienceをわかりやすく伝えることをビジネスにするという一個しかやってない。Scienceをわかりやすく伝えることで社会貢献する。実際にやってみると感じることですが、誰にでもわかりやすく伝えるっていうのは本当に難しいです。方向性は違いますが、研究をするのと同じくらい難しく、そしてexitingです。だから、わかりやすく伝えることってビジネスになり得るんですよ。