医師が起業してまで実現したい世界とは
メドピア株式会社 代表取締役/石見 陽
インターンの大学生が起業家へ取材する!起業家インタビューのthe Entrepreneur(アントレプレナー)
石見 陽(いわみ よう/Yo Iwami)
メドピア株式会社 代表取締役社長(医師・医学博士)
1999年に信州大学医学部を卒業し、東京女子医科大学病院循環器内科学に入局。
循環器内科医として勤務する傍ら、2004年12月に株式会社メディカル・オブリージュ(現メドピア株式会社)を設立し、代表取締役社長に就任。
2007年8月に医師専用コミュニティサイト「Next Doctors(現MedPeer)」を開設し、現在10万人以上の医師(日本の医師の3人に1人)が参加する医師集合知プラットフォームへと成長させる。
2013年に企業家表彰制度「EOY 2013 Japan」チャレンジング・スピリット部門でファイナリストに選出され、2014年に東証マザーズに上場。
現在も週一回の診療を継続する、現役医師兼経営者。
医大生の頃はほとんど飲んでばかりいましたね(笑)。それとバドミントンもしていました。バドミントン部では部長を務めたこともあります。僕はもともとリーダーシップがあって周りの人間をぐいぐい引っ張っていくタイプではなかったのですが、医学部のみんなが僕よりも大人しかったということもあって部長になっちゃいました。いざ部長になるとチームをまとめて練習のプログラムを考えて、目標設定もしたりと、ものすごく充実していて学生の間の経験としては良かったですね。
それと、学生の間に力を入れて精進したことが3つあります。インターネットに精通すること、ブラインドタッチができるようになること、そして英語を学ぶことです。パソコンに精通することと英語が話せるようになることは将来に役立つと考えたからです。でも、英語に関しては駅前留学はしましたがあまり十分にはできませんでしたね。
事業の根本として医師向けの会員制のコミュニティサイト「MedPeer(メドピア)」を運営しています。現在医師会員数は10万人を超え、国内医師の3人に1人が参加するサイトになっています。この「MedPeer」を基盤にして主に二つの事業に取り組んでいます。
一つ目は、「医師集合知サービス」という多くの医師同士のコミュニケーションによって形成された「集合知」を、MedPeerの各サービスを通じて医師たちが無料で利用することができるサービスを運営しています。医師が日々携わる臨床プロセスの段階ごとに適切なサービスを提供しており、薬剤の処方実感を共有できる「薬剤評価掲示板」、エキスパートドクターに症例の相談ができる「Meet the Experts」など、医師たちはMedPeerのサービスを利用して様々な情報交換を行っております。
二つ目は、「医師求人情報サービス」という医師のキャリアをサポートするサービスを提供しております。「MedPeerキャリア(医師の転職、アルバイト情報)」では求人情報の提供など、医師の転職、アルバイト応募をサポートするサービスを提供しております。「ホスピタル・レポート(勤務先病院評価)」や「レジデント・レポート(研修先病院評価)」では、実際に勤務または初期研修に参加した医師から寄せられた、実体験にもとづく勤務先・研修先としての病院評価レポートを提供しております。
2004年の起業当事は、今の「MedPeerキャリア」の前身となる医師求人情報サービスからスタートしました。当時はビジネスモデルも思いついていなかったのですが、まずは会社を起こそうと決めました。何をしようか悩んでいたところ、やはり私の強みは「自分が医師である」ことなので、医師に関連したビジネスを考え、医師×OOでマトリクスを書いていきました。そこで「医師」×「他の業界」でやっていそうなビジネスを考えていき、最終的に転職情報サービスが思い浮かんだことがスタートでした。 その後、医師コミュニティサイトとしての「MedPeer」を開設したのは2007年です。当事SNSとして「mixi(ミクシィ)」が流行していましたが、これを自分でも使っているうちに「医師向けの会員制のサイトが必要である」と思ったことが一番の始まりです。
はじめの1~2年は、とにかく体を動かしていました。最初はWEBサービスなので医師同士の相互紹介で増えると思っていたんです。しかし医師は個人情報に敏感な人たちが多く、簡単にメールアドレスを登録したりしないので予想より会員数は増えませんでした。そこで、医師が参加する学会にブースを出して先生一人ひとりにビラを配り、自分のやりたいことをひたすら説いてまわっていましたね。
一つは外部環境の変化があったことです。一千万円の資本金を募らないと起業できなかった時代から法律が変わり、一円でも株式会社が創れるような時代になって起業することのハードルが下がったんです。また、起業ブームも広がっていましたね。
もう一つは、大学生の頃に読んでいた「貧乏父さん金持ち父さん」という本の中で働き方に4つの選択肢があることを知りました。従業員、自営業者、経営者、投資家の4つです。その中で勤務医は従業員、開業医は自営業の枠に入るのですが、本の中ではこれらの4つのカテゴリーのバランスを意識した方が良いと書いていました。起業しても医者をやめるつもりはなかったこと、研究生になると二年間はある程度時間の融通が利くことがわかっていたので、その間に経営者や投資の方面である程度自分のポートフォリオを安定させておこうと考えたのです。その方がその後専門家として道を究めていく際にも安心していけるのではないかと思い、経営者にチャレンジしてみようと思ったのが始まりでした。