「崖から飛び降り、落ちるまでに飛行機を組み立てる」
株式会社Seibii / 代表取締役社長 千村真希
千村真希氏は2019年に株式会社Seibiiを創業。大学時代にチュニジアへの長期滞在を経験し、現地の日系企業を訪ね歩くうちにビジネスへの関心を深めていった。帰国後は2011年から2019年まで三井物産に勤務し、金属資源の取引に携わるなかで地に足のついた商売の基礎を築く。そんな千村氏が、いま注力しているのは自動車の「出張整備サービス」という新しい形態だ。少子高齢化、整備士不足、急速に進む技術革新など、多くの課題に直面している整備業界にどう活路を見出すのか。今回は、従来の常識を変えようと奮闘する千村氏の挑戦と、その裏にある事業に対する想いに迫る。
Seibiiは、スマートフォン一つで呼べる「出張整備サービス」を全国47都道府県で展開しています。たとえば、車検やオイル交換、タイヤ交換、バッテリー交換、ドライブレコーダーの取り付け、さらにはエンジンルーム周りの細かい整備まで、幅広く対応できるのが特徴です。整備工場の利用が一般的だった従来の仕組みでは、お客様ご自身が営業時間内に車を持ち込んで、完成するまで数日〜数時間待つ必要がありました。でもSeibiiの場合は、整備士のほうからお客様の指定場所へ伺います。つまり“必要なとき、必要な場所で整備を受けられる”わけです。
全国対応ができる点も大きな強みです。地方はもちろんですが、実は都市部に住んでいても、なかなか平日に整備工場へ行くのは難しい方が多いですよね。共働きの世帯や子育ての最中にあるファミリー層、それから平日は忙しく動き回るビジネスパーソンなど、本当に幅広い方から「持ち込まなくていいから助かった」「自分の空いている時間帯を選べるから便利だ」と喜びの声をいただいています。
さらに、整備料金の不透明さを解消している点もSeibiiの特徴です。私たちはウェブサイト上で基本的な整備費用を公開し、「作業前に追加料金が出る場合は必ずお客様に事前確認する」ルールを徹底しています。実は、従来の自動車整備業界では「いざ請求書を見たら想像以上に高かった」というケースがまあまああるんですね。そこをITシステムでしっかり管理し、なるべくわかりやすい状態にしておくことで、お客様が安心して利用できる仕組みを作っています。
まず「出張整備」という仕組み自体が、まだ広く認知されていなかったんですよね。安全面や品質に対する不安は当然ですし、「本当にちゃんと車を見てもらえるの?」とか「どうせなら整備工場へ行かないと不安」という声も少なくありませんでした。そこから始めたのが、徹底した情報公開とコールセンターによる顧客対応です。具体的には、ウェブサイトで料金表や作業内容を明示し、さらに整備士のプロフィールや保有資格、過去のレビューなどをできるだけ見える化しています。また、作業後にもお客様からのフィードバックを集め、口コミとしてプラットフォームに載せています。
それだけでなく、「整備のことで困ったときに気軽に相談できる車のプロフェッショナル」というブランド構築を行い、問い合わせ先の電話やチャット窓口を整備しました。お客様には「疑問があれば迷わず連絡してほしい」とアナウンスし、可能な限り早い対応を徹底する。さらにSNSやブログ、地域イベントへの出展、チラシ配布などの地道な宣伝活動も行いました。こうした取り組みはすぐに大成功とはいかなかったものの、徐々に効果を発揮してきて、「使ってみたら手軽で安心だった」「忙しい日常のなかで車を預けなくて済むのは画期的」という声につながっていきました。その認知と口コミの積み重ねによって、事業が少しずつ安定していった感じですね。