是々非々主義
社会保険労務士法人ジャパン・パーソネル・サポート / 河村 卓
社会保険労務士になって20余年という、大ベテランの河村さん。「日本で最も信頼される社会保険労務士事務所」をめざし、スタッフの育成を重視し ています。個人として長く積み上げてきた社会保険労務士の視点だけではなく、自ら法人を経営する広い視野によって、企業や社会を見渡しています。
父親が同じ社会保険労務士で、父はちょうど社会保険労務士の制度が出来たころから、社会保険労務士をしていました。
学生のときは全然跡を継ぐつもりはなくて、就職したのも建設業で、現場監督をしていたのですが、就職して3年目に父親が体調をこわしたことと、就職した会社での仕事内容に希望がもてず、家の仕事を手伝おうと思いました。
それまで個人事業として社会保険労務士の仕事をしていたときは、職員も家族とパート数名で企業としての体裁はとっていませんでした。
あくまで個人の社会保険労務士としてお客様のところに行って、問題を解決していました。社会保険労務士の仕事は間口が広く奥が深いので、一人の社会保険労 務士が、全ての分野において完全に仕事をするということに、だんだん限界が見えてきたのです。私のところも、父が長くやってきたので、顧問先の企業が多く ありました。そうすると、一人ひとりのお客様に全てのサービスを100%自分ひとりで提供するのは、能力的にも時間的にも不可能になってきます。そこで、 ちょうど社会保険労務士法人という制度が出来たので、優秀な若者を育てて、それぞれに専門の分野を持たせ、各分野でサービスを提供するという形を目指すこ とにしました。法人化したことによって、お客様に対して信頼感・安心感を与えることができるようになったと思っています。個人でやっていると、一代限り で、それまでにお付き合いしてきた企業の文化とか伝統を継承することができなくなるのですが、法人化するとそれが可能になるのです。
一つには、社会保険庁解体や行政手続の電子化などの国の行政改革などによって、手続き的な仕事のニーズが減ってきていることがあります。そうすると、コンサルタントに特化したところでお客様にサービスを提供していくほうが、お客様には喜んでいただける状況になったのです。 もう一つが、個別労働紛争の問題が非常に多くなっているということです。現在は、労働関係の情報に関しても、インターネット上で簡単に手に入れることがで きるため、労働者の方が、一点に絞って研究すると理論武装できて、かえって経営者の方が太刀打ちできないという状況があります。私のクライアントは、全て 法人のお客様なので、経営者や会社の経営が労使間のトラブルによって深刻な事態に陥らないように相談に応じています。
ほとんどの経営者の方は、これまで内部の人事労務管理よりも外向けの営業や開発などに力を注がれることが多いように感じます。「良い商品・サービスを提供 したい」という意識で仕事をしていて、人事・労務管理に関しては、問題が発生してから気づくといった状況でした。でも、訴えてくる相手は社長に訴えてくる わけです。たとえば、成績も悪く勤務態度も不良な社員がいて、社長がその場の感情で「クビだ!」と言ってしまうと、「30日分の給与を支払わなくてはなら ない」というルールを楯にとって、解雇を告げられた途端にそれを要求してくることもあります。トラブルになるというのは、退職をする時に表面化することが 多いのです。