変化を読み取る力を常に持ち続ける
株式会社大川印刷 / 大川哲郎
私が入った時は非常に辛い時期だったんです。ですから、会社に入ってとてもカルチャーショックを受けました。皆さんは「スクール・ウォーズ」というドラマは知っていますか?ラグビーのダメチームが優勝するまでのお話しなんですけど、もうそれとそっくりなんです。暴走族の乗るような改造された車で営業に行ってしまったり。納期遅延は当たり前、不正もありました。その上、管理職の人でさえ遅刻するような無秩序な環境でした。
当時24、5の若者でしたので、私の話を聞いてくれる人は誰もいませんでした。今思えば社員の平均年齢が親子位の年の差がありましたから、私の言うことなど聞いてくれるはずもありません。変革したくても出来ない環境で非常に苦しみました。
その時思ったのが、「他者は変えられないけど、自分は変えられる」と言うことです。言い換えますと、「自分が変わらないと、相手も変えられない」ってことですよね。 お恥ずかしいお話しなのですが、「本当に自分は不幸だ」って思っていたんです。なぜなら、親を医療ミスで亡くし大学生活も人並に楽しめた訳ではなかったと感じていたからです。会社に入ってからもこのような無秩序な環境ですし・・・。なんでこんなことになってしまったんだろう?と。
しかし、今出来ること、当たり前のことを当たり前にやる「凡事徹底」をしていこうと決意しました。挨拶はちゃんとする、感謝すべき時は素直に「ありがとう」と言う、間違えたら「すみません」と言うなどです。でもそれって今も活きていますよ。
私の会社では月一回、トータル1時間くらい皆で語り合う場を設けています。私の一方通行的な話ではなく、語り合うんです。 昨日もすごく良い朝礼だったと思うのですが、ある社員さんが言っていたことで、駅の改札で駅員さんが「おはようございます!」と挨拶をしていて、挨拶を返している人ってどのくらいいるのでしょうか?すごく少ないと思います。ですから、挨拶は自分からしようよ!という「凡事徹底」の話ですよね。
昔からの社員さんの多くが、私と合わないということで退職していきました。その時代が一番辛かったです。自分の話すら聞いてくれないのでコミュニケーションが出来ないんです。その無秩序だった環境を、立て直すにはものすごく時間がかかりました。その状況を打破する為に、コンサルタントの方にお願いしたことはありましたが、それは90%失敗でした。会社理念はあったのですが、新たな再生をするために「大川スピリット」という指針をつくり立て直しました。その中に、「現状維持は退歩なり」という言葉があるのですが、やはり人間は変化を嫌い現状維持を好むんですよね。地道に一人ひとりに働きかけ、一緒に「変わること」を考え、行動してきました。
企業として、変化に対応していくとこはとても大切ですが、変化に対応するだけでなく、これからは変化を創造していくことが大切であると思います。そのためにも企業内で新たな事業を起こす、企業内起業という考えも大切であると言えます。 一方で、起業しても5年で85%の企業が消えてしまうと言うデータがあります。とても恐ろしいことですね。だから130年続いているのがすごいということではなく、何で続けられているかを正しく理解する必要があると感じました。
生半可な気持ちでは100年以上も持続する企業は作れないと思います。これからも必要とされる企業として経営していくためにも、既存の企業の中で新しい取り組みに積極的にチャレンジしていく必要があると考えます。
私は単に自然が好きなんです。育ってきた場所が今も環境が良いところなのですが、以前はもっと自然に溢れていました。働くなら豊かな自然をこれ以上壊さないで働きたいと思いました。 私は、CSRとは「地域や社会に必要とされる人と企業を目指す取組み」であると社員さん達に説明しています。地域や社会に必要とされるためには、環境経営は当然のものであると思います。
今は当たり前になりましたが、事業活動全般に環境配慮をしていた企業は少なかったのではないでしょうか? 私たちは、営業活動にカーシェアリングなどを利用することでCO2の排出量減少に努めています。用紙選択過程では、森林認証紙等の活用、印刷工程では石油を全く使っていないインキ等の活用、製本工程では針金を使用しない製本方法を導入しています。配送では再使用可能な通い箱を使用し、圧縮天然ガス車で納品するなど、営業活動―用紙選択―印刷―製本―配送、と一貫してお客様に対して環境配慮型印刷物の導入を促進しています。この一連の流れが「エコライン」です。
その他、「環境への負荷を軽減する製品」から一歩進み「環境を回復させる」というコンセプトを持った「森がよろこぶカレンダー」等の商品開発を行い、森林活性化や地球温暖化防止につながる製品づくりも行っています。様々な活動がグリーン購入大賞に輝いた要因だと思います。