創業支援のプロが語る、失敗しない起業家とは?
株式会社MMコンサルティング 代表/上野光夫
私の場合は、創業して2年目の頃に1番苦しい思いをしました。ただ、経営の苦しい時期を乗り越えても、また難しい局面には出くわすものです。会社というものは、一見、右肩上がりで順調に成長しているように見えても、裏で実は倒産に見舞われるような危機を何度も乗り越えてきているという事情があるものです。経営に詳しくない人は、創業して間もない企業は最初こそ不安定でも、そこを乗り切れば安定して軌道に乗って行くと思いがちです。でも、そんな事は全くありません。絶対に安定はしません。経営というものは、「山あり谷あり」という苦境を乗り越え続けなければならないという状況に必ずなります。会社経営によくありがちな失敗として、経営が上手くいっている時に天狗になってしまう事です。経営は一度油断してしまうと、一気にズドンと落ちます。私は過去に何人もそういう起業家を見てきました。
学生の人は特に、起業家というとメディアに取り上げられるようなカッコイイ人を想像しますよね? でも、そういった人を真似しようとするのは、あまりお勧めしません。メディア上では華やかに取り上げられていますが、裏では全く異なる状況に陥っていることも多くあります。私自身、そういった会社を沢山見てきました。
それについては、根拠のあるデータも少ないので信じ過ぎないほうが良いでしょう。私の感覚では、そこまで倒産していません。事実、前職の日本政策金融公庫の融資を受けて起業した会社の5年後を追った統計データがあるのですが、融資してから5年後に倒産または廃業した会社は、15%ほどしかありませんでした。もちろん融資をどこからも受けずに起業した会社等を含めれば、実際の廃業率はもっと上がるのでしょう。一方で、融資を受けている会社ほど存続し易い傾向にあるのは間違いないようです。
そうですね。融資に限らず資本金はなるべく多めに持っておいた方が良いです。20歳以上であれば、日本政策金融公庫から融資を受ける資格は得られますが、融資を受ける為には、自身で資本金をある程度用意しておくことが前提となります。学生であまり貯金がない場合は、アルバイトをして資本金を貯めることからスタートしても良いですし、親に頼ってお金を出資してもらうことも考えてみると良いでしょう。経営は自分一人では務まりません。人を頼ることができる事も重要な能力です。
いくつかありますが、私が必ず最初に言う事があります。それは、「起業家として成功したいなら『粘り』と『根性』と『野望』を持ちなさい」という事です。この3つの要素がまずは必要です。
他には「カッコつけようとせず、泥臭くやること」も大切ですね。泥臭くというのは、面倒で無駄になりそうな事でもとりあえず一生懸命取り組んでみるという意味です。
そして起業家として長く続ける為の「起業家のメンタル」というのもあります。これも大事です。なかなか起業家のメンタルについて一言では説明できないのですが、どん底に落ちた時に這い上がるために必要になります。一時、上手く経営ができていても、一度どん底に落ちると、途端にわけが分からないような状況になってしまって倒産する人も多いのです。どん底にいる時こそ精神的に強く自分を保てるマインドの強さが必要になります。
後は、やはり「素直さ」ですね。若い人は、カッコイイ起業家というと自分独自の考え方を持った人をイメージするかもしれませんが、しっかりと周りの意見を聴くことが出来る人でないと、経営は上手くいきません。素直さがないと融資も受けづらくなります。融資担当者も人を見て判断していますからね。見せかけでも良いので、周りから素直に見られるような態度で振る舞えることも重要になります。