お金が出せない事こそ、価値がある
RCF / 藤沢烈
創造的な事や、社会にとって新しい事が大好きだからです。 ベンチャーを支援する人材は、当時は足りませんでした。何せ儲かりませんから。実際、コンサルティングといって会うと、もちろんお金はもらえず、僕がご飯を奢りながらアドバイスをするという状況でした(笑)。だけど全く苦ではありませんでした。
通常コンサルティングを行う場合は、大手企業さんからお金を頂戴するわけです。当たり前ですが、大手さんはビジネスモデルが確立されているからフィーを出せる。だけど、それは出来上がり済みのビジネスモデルを延命させる事のように感じていました。
片やベンチャーは、今この瞬間、何もビジネスになっていない。ベンチャー企業は、全くのゼロから、産業を築きあげる試みです。ゼロから始める故にお金はありません。だけど、僕は創造的な事が好きなわけで、お金が無い事自体が素晴らしいと思うのです。
ベンチャーコンサルティングの場合、代理のCOO(執行責任者)のようなポジションを請け負う点です。そのポジションが、どのベンチャーにも人材として不足している。CEO(経営責任者)とCTO(技術責任者)はいますが、後はスタッフぐらいで、実務をマネージする人が欠けています。そこを請け負います。
ただし、常時マネージすると、会社が官僚的になる。とはいえCOOがいないと社内が回らない。そこで、パートタイムCOOとして関わります。マネジメントなんて週1回で十分で、それ以上時間を使うのは、むしろ組織を硬直させるからやめたほうがいいとも考えています。
「実は2007年に一度、会社はストップさせました。僕の悪い癖で、誰かが似た事を始めたらもういい、と思ってしまう。当時ベンチャー支援の会社も数多く台頭していましたから、自分自身は動きをストップ。社員やインターン生も全て離れてもらったんです。
読書です。仕事を最盛期の10分の1ぐらいに減らし、一日ずっと本を読んでいました。2年間で1,200冊。1日2冊平均ですね。「病気になったのか」と言われましたが、毎日本を読みながらもランニングもしており、一生で一番元気でした(笑)
直感的に必要性を感じたのです。世の中の大きな変化(パラダイムシフト)は非連続に突発的に起きると思っていて、僕のやっている事は連続的に成長するかもしれないけれども、今後の世の中の大きな潮流に乗り遅れてしまう、という危機感を感じたわけです。
これまでの取り組みは他の人にやって貰ってよくて、自分は違うことを考えたい。1回やってきた事を見つめ直すために本を読み始めたのです。始めてみるとメチャクチャ面白い。読書が止まらなくなり、毎日ブログに書評を書くことが日課になっていました。
ベンチャー支援が仕事ですが、今はこだわらなくなりました。また、目標を持つのをやめました。
今、目の前で起きている事を感じ取りながら、そこに向き合う事を重視しています。人や出来事との縁に何か意味があるだろうと思っています。だから5年後10年後の事業の展望はありません。3ヶ月先の事もわからないのです。
現代は、組織と個人の激闘の時代だと考えています。
組織は、もともと個人が自由になるために生まれました。狩る人、守る人、子供を育てる人と、組織的に役割分担する事で人は自由に生きやすくなる。会社(company)とは「仲間」という意味です。仲間たちが集まる事で、1人ではできない事を実現できた。国もそうですね。外敵がいる中で、国という単位で内部の秩序を守りながらも、外に対し外交によって問題発生を防ぐ。家族も企業も国も、全て個人の自由を守るために存在していたのです。
それが今、逆コースになっています。国も会社も、場合によっては家族ですら個人の自由を奪う存在になってきた。組織を守るために、個人が犠牲になる現実がある。
これからは、組織らしからぬ形でバラバラの個人が繋がる社会に変化していきます。組織と個の激闘の時代をへて、個の時代へ。これが僕の世界観です。TwitterでもFacebookでも構いませんが、個をクローズアップする為のツールやサービスやビジネスが生まれてきているし、ノマド(高等遊民)的な生き方をする人が現れています。
僕自身はそうした世界観を追究している仲間たちを応援したい。企業は通常、古いパラダイムで動いていますが、彼らの固定観念を排し、新しい世界観に引きずり込みたいと思っています。若い世代はこの事実に直感的に気付いていますが、50代以上の旧エスタブリッシュメント層はそうした事実には気付きにくい状況があります。