起業=ストレスフリー
有限会社ビジョンブリッジ / 橋本 美智子
私がこの会社を立ち上げたのは4年前ですが、その前にATMフォーラムという業界団体で仕事をしておりました。 私はそこでアジア・太平洋事務局の責任者として、対内的には、会員様に向けて会員サービスや技術委員会でのロジスティクスを行ったり、会員様以外の方に向けては、会員になっていただくための普及啓発活動をしたりということをしていました。会員になっていただくためには広く広報をする必要があって、国際会議を開催したり、プレスカンファレンスを開いたりしました。アジア太平洋担当ということで、オーストラリア・中国・インドなど域内の数多くの国々でセミナーやワークショップなどの会議をコーディネートいたしました。
私は以前NTTで仕事をしておりまして、32歳になったときに、人生の転機を迎え、これからどうしようと考えていた時に、たまたまATMフォーラムでアジア・太平洋のリージョナル・マネージャー(地域責任者)を探しているというお話をいただきました。私はもっと国際的に仕事をしていきたいと思いましたが、残念ながら技術の専門家ではないので、どうしても技術者に向けて会議をするというところでは限界を感じるのです。本当は、会議をする際にもどういう人にアプローチすればいいのかとかは、技術者の人のほうがすぐ分かりますよね。しかし、そこは役割分担の発想で、事務局の裏方としてグローバルな観点の方で携われればいいと思っていました。
基本的には仕事を通してでした。NTTにいたとき部長秘書を務めておりまして、当時の部長が国際標準化活動で議長などを務めておられまして、グローバルに活躍されている方でした。国際会議などもいろいろお手伝いをさせていただくことが多くて、そういうことに携わっていきながら、「面白い仕事だな」と思うことが多かったのですね。 人と接するお仕事なので、たとえば、今は普通になりましたけれども、「ベジタリアンのために食事を用意しなければいけない」という場合に、宗教上の意味のベジタリアンなのか、健康上の意味のベジタリアンなのかという観点で、「動物性タンパク質はダメだけれども、植物性タンパク質ならOK」など、そういうカルチャーの違いのみならず個人の生活習慣にまで配慮しなくてはならないわけです。 あるいは、会議が始まる時間でも、「9時に始める」といった場合に、ある国の人々は9時過ぎに来るのに対して、日本の人たちなら早くから来て待っている、ということで、いろいろな文化や価値観・習慣の違いがあるのですが、ビジネスの世界では、国際標準というか、一定の確立されたプロトコルがないといけない ですよね。「これはうちの習慣だから」と言われてしまっては、どういう利益の計算の仕方をすれば良いのか、どういうリスクの計算をしなければいけないのか が分かりませんよね。 ビジネスの大原則というのは、誠実に正直にお付き合いさせていただくということになります。でもそうじゃないこともたくさんあって、そういうことをどう認 識して、どうリスクをヘッジしていくのかは、理詰めでビジネスに精通しているからできるようになるわけでもないのです。 国際会議に携わる中でそういうことが面白いと思うようになって、私がATMフォーラムにいたときもそういう経験を活用させていただきました。自分からイン ドに出かけたり、ホテルに出向いて交渉をしたり、その後は記者会見を開いて活動内容についてアピールをして現地の新聞に書いてもらったり、地元の人の協力を得て、政府の要人をお呼びしたりしていました。