自分の「好きなこと」を事業化しないと、続いていかない
株式会社スノーピーク代表取締役/山井 太
私は父のことを尊敬しています。父はロッククライミングが大好きだったんですね。そんな父がロッククライマーとしてロッククライミングのギアをつくるという事業を始めました。スノーピークの創業精神の原点はそこにあると思っています。そういった意味で「ロッククライマーが創業したアウトドアメーカーです」という、父に対するポジショニングをしています。
ただ、私が父から受け継いだものって、そういう創業の精神とか、アウトドアのギアをつくるってことだけで、その他のことはあんまり引き継いでいませんね。
事業内容も、私が入ったときとは全く違っています。私が父の会社に入ったときは売上が5億円くらいだったんですね。内訳としては、主に釣具をつくっていて、それが4億円くらい。登山の用品が5,000万円くらい。そして、金物の卸が5,000万円くらい。
じゃあ今、そのうちのどの事業をやっているかというと、登山はちょっと残ってますけど他は1個もやってないんですよね。釣具は他社に営業譲渡していますし、金物は辞めてしまいました。私が入ったときにやっていた事業は、ほとんどやってないんです。
ただ、父から「ユーザーとしてモノをつくる」っていうことはしっかりと受け継いでいますね。あとは「人と自然をつなぐ」「人と人をつなぐ」っていうスノーピークのコアバリューも、受け継いているんだと思います。
そうですね…。私はあんまり葛藤しないタイプなんで(笑)もちろんゼロではないですよ。創業者が居ない中で、創業者が興したものを辞めて良いかどうかっていうのはあります。まあでも、その分ちゃんと創業者をポジショニングできていますし、整理されているので、その延長線上でちゃんと未来があれば良いのかなと。
父は創業者で、第一世代の人。そして今は私が第二世代で、次は第三世代と続いていきます。そのときに、その世代の人たちが「好きなことを」事業化しないと、それは続いていかないんですよね。