自分の「好きなこと」を事業化しないと、続いていかない
株式会社スノーピーク代表取締役/山井 太
そうですね。ひとまず「ミッション・ステートメント」がきちんと明文化されているんで、そこに沿って進んでいくことは変わらないでしょうね。まあ、それも誰かが将来変えるかもしれないですけどね。でも、その時代にフィットしている限りは変えなくていいんじゃないかと思っています。
第三世代への事業承継については、ある程度イメージはしています。
今、当社グループに、私以外に社長が1人だけ居るんですね。それは、Snow Peak Korea, Inc.という会社の社長です。創業から一昨年の10月までは私が社長を兼務していたんですけど、今は韓国人のキム・ナミヒョンっていう男が社長をやっています。
あとはアメリカや台湾にも事業所があって、将来的に売上が大きくなれば分社化したいと考えているので、そうなれば、アメリカ人や台湾人の社長が生れる可能性もあると思うんですね。
また、日本でも将来的には事業毎に分社化できればとも考えていますので、いつになるかわかりませんがグループ内の5・6人の社長の中で、グループの社長にふさわしい人間が居れば、その人間が社長になっていけばいいなと思っています。事業承継のイメージとしては、そんなものを描いています。まあ、その通りになるかどうかは、やってみないとわからないですけどね。
もし、スノーピークがアウトドアのメーカーとしてこれからも行くのであればIPOは必要なかったんですよね。十分に知名度も高いブランドだと自負していますし、熱狂的なファンもたくさんいらっしゃいますからね。そうやって、今の事業を守っていくのであれば、IPOは必要なかったんです。
ただ、我々の事業の本質ってものを考えたときに、「このままでいいんだろうか?」って思ったんですね。
高度な文明社会の中で人間性が阻害されることは、今も起こっているわけです。文明はメリットも大きいけど、デメリットもある。そのデメリットのところを、我々は「自然の中で時間を過ごす」という手段によって、今まで癒してきたんだと思うんです。
じゃあ、どれだけの割合の人たちを癒せているのかと考えると、日本で今キャンプの人口は750万人くらいなので、人口比でいくと6%程度なんですね。逆に言うと94%強の人たちはキャンプをやってない。
話を分かりやすくするために「キャンパー/非キャンパー」で分けると、キャンプを楽しんでいる方々は、週末とか、お休みの日には自然の中で時間を過ごすことによって、ご家族というユニット単位では幸せになってらっしゃると思うんです。私は年間1万人以上の方とキャンプをさせていただくので、そこの社会的な意義は深く感じています。
でも「じゃあ残りの94%の方はどうなんだろう?」ということを考えていくと、どっちかというと「キャンパー」の方が癒やされていて、「非キャンパー」は癒やされていないんですよ。どっちが危ないかって言ったら、94%の人たちが危ないんです。
それはスノーピークが社会から頼まれたわけではないので、私たちのおせっかいなんですけどね。我々が都市に出て行って、自然と人を繋ぐってことをやるっていうことを決めました。それが「アーバンアウトドア」事業で、これから事業推進にドライブをかけていきますよってことでIPOをしました。
それは時代の要請でもあると思うんです。そういう意味ではスノーピークがやっている事業ってある意味、社会問題解決型のビジネスなんだと思いますね。じゃあキャンパーの問題と非キャンパーの問題と、どっちが大きいかっていうと非キャンパーの問題の方が大きいと思うんですよ。だから、アーバンアウトドアの事業をより大きくしたいと思っているということですね。