『成功するまで、失敗し続ける“信念”はあるか?』
株式会社ispace / 代表取締役CEO&Founder 袴田武史
やはり「お金がないこと」に苦労しました。
2010年に始めた時は、世の中としても、 なかなかスタートアップ企業に投資をする流れも大きくなかったし、お金を集めるというのが、1番大変なところでした。最初から宇宙開発を事業化するには、技術よりもどうやってお金を集めるかを考えて実行できるチームを作りました。
一方、技術については東北大学の吉田教授の研究室の協力がありました。そのため、お金が1番の問題で、今でも課題の1つです。
当初から、我々はスポンサーシップをベースとした事業モデルを考えていました。
ですので、いかにスポンサー視点で広告としての媒体価値を作っていくかを模索していました。 ただ、媒体価値はいきなり作れるものではなく、当初はスポンサーとしてお金を出していただける会社はありませんでした。
そこで、100通ぐらい手書きの手紙に書いて、名だたる企業に送りました。特に、一族経営をしているような、意思決定者が明確な企業に送り「 面談の機会をいただけますか?」と送ったこともありましたが、返信はほとんど返ってきませんでした。多分、返ってきたのは10%位ですかね。お断りの返信等、何かしらアクションをもらえたところはありました。ただ、それが結果として直接的に売り上げに繋がったかっていうと、ほとんど繋がっていませんでした。
また、資金調達面では、事業や技術を説明することが重要だと思われがちですが、エンジェル・シードの段階だと、実はそこまで重要性は高くないと自分の経験上感じます。
というのも、初期の投資家は「技術ではなく、経営者」を見ているんです。1番中心にいる人が、何を考え、どれだけやりきれるのかしか見ていません。僕の場合は、Google Lunar XPRIZEに出場することが最終的な目的ではなく、民間の宇宙産業を作るビジョンがあり、そこを投資家の方に評価していただきました。やはり、中長期的な視点では事業や技術を説明することも重要ですが、初期の段階においては自分が実現したい社会のあり方を見せていくことが大事だと思いますね。
はい。やはり、技術やビジネスは変わるんですよ。逆に、技術にこだわりを持ち続ける人がトップになると、その技術に固執して失敗するんじゃないかなと思います。
もちろん、技術が重要な指標であることは変わりないですけど、経営者自身のビジョンという大きくは変わらない信念を持ち続けることが重要だと感じます。