自己理解が導くインサイトで、大企業に勝つべくして勝つ
株式会社ココナラ / 創業者 現・取締役 南章行
自分にしか作れない社会を作った結果、「楽しい人生」を得られました。
前提として、私のモチベーションの源泉は、「私がいる社会といない社会の差分をどれだけ生み出せるか」にあります。すなわち、それが私の価値だから。さらに言うと、私がいなくても『誰かが代わりにやってるよね』と思うものは、私の価値ではないとも思っています。なぜなら、代わりになる人がいるから。この差分を生み出せるかがすごく私にとっては重要なんです。
その意味で、ココナラのかなり特殊で大変な立ち上げ方は、まさしく私でないとできなかったことだと思っています。その結果、『ココナラで人生が変わりました』というユーザーさんが膨大にいるんです。今でもユーザーイベントを開催すると、『本当にココナラを作ってくれてありがとう』と言っていただくことが多くて、その話を聞くたびに『やってよかったな』と泣きそうになります。そんな世界を作れたと思いながら日々生きることには、他に形容できない喜びがあります。
パソコンの父、アラン・ケイの残した『未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ』という言葉が、起業家精神をよく体現しています。モノづくりの精神やエンジニアの美徳も近いものがあるかもしれませんが、やはり未来や社会といった大きなものに対して、予測するのではなく作ろうとすることが、アントレプレナーシップだと思います。私自身、『「見たい社会を見たい」から、自分で作ってしまおう』とよく言っていました。
「自分のモチベーションを深く理解していること」です。自分がどういう人間で、何にモチベートされるのかということを深く知っていないと、インサイトにたどり着く前に諦めてしまうものです。ただの精神論ではなく、本当の意味で諦めないためには、自分がどういうものだったら頑張れるかということを深く知ったうえで、それに紐つく事業領域や組織運営をちゃんと設計していくことがすごく大事です。
起業家は、見たい社会を見るために頑張っている人たちなので、そのモチベーションが続くことが、起業家にとって1番大事なアセットです。裏を返すと、その欲求が止まることは起業家の死を意味します。であれば、口先の綺麗なビジョンではなくて、本音で自分は何で駆動しているのかというものをよく自分で理解し、それに紐付く事業と組織を作ることが圧倒的に重要です。
やってみないとわからないので、「起業したいならすればいい」のではないでしょうか。失敗しても死にはしませんし、例えばVCに迷惑をかけるのは、もうそういう職業だから仕方のないことだと、割り切って良いと思います。
一見、起業家になることはリスクが高いように見えますが、正しく行えば非常にリスクは低いのが実情です。もし仮に失敗したとしても、ベンチャーマインドのある人は、企業が欲しがるので、他に働く場所はいくらでもあります。すなわち、アップサイドしかないオプション取引みたいなものなので、まずは起業したらいいと思います。
最初は単なる憧れでも全然いいと思いますし、ファッションで起業してもいいと思います。それをダサいと言われても、「それでも」とやっているうちに、本物に化けるかもしれません。