どん底を見るのも悪いもんじゃない
料理家・フードコーディネーター / SHIORI
短大卒業後、料理家のアシスタントを経て独立。2007年8月「作ってあげたい彼ごはん」を出版。著書累計400万部を超える。「若い女の子にもっと料理を楽しんでもらいたい」をモットーにテレビ、女性ファッション誌、イベント、トークショーなど多数出演。最近はヨーロッパやアジアなど短期での海外料理留学にも力を注いでいる。
料理の楽しさを直接伝えるべく、2014年春代官山に待望の料理スタジオ「L’atelier de SHIORI」をオープン。
【L’atelier de SHIORI 公式WEBサイト】http://www.atelier-shiori.com/
当時、若い子のための料理本が世の中には全く存在していませんでした。その為、それを出版するために日々奮闘していました。出版社に何度も企画を持ち込みましたが、なかなか受け入れられず、諦めそうにもなりました。同世代の子たちが楽しそうにキャンパスライフを送っていたなか、「こんなに必死にやって、もし夢が叶わなかったらどうしよう」と心が折れそうになったこともありました。
「もしここで諦めて、他の誰か違う人がこの夢を成し遂げたら嫌だ」と思ったんです。負けず嫌いな性格なので、「誰も成し遂げたことのない、新しいことをやりたい!」という思いがありました。
それから、「絶対的な自信があった」というのも、頑張ることができた理由のひとつです。私は、若い子には料理本が必要だと確信していました。「若い子が恋をすると料理をしたくなる」というのは自分自身の実体験でもあるので、好きな人のために料理を作る、というこの企画にはニーズがあると思いました。この自信がなければ、成し遂げられなかったと思います。
学生の時、私の将来の夢は「かわいいお嫁さん」になることでした。中学生のころからずっと付き合っていた彼がいて、その人のことが大好きでした。それこそ、彼の予定を聞かないと自分の予定を入れられないくらい。
20歳の夏、なかなか就職活動も上手くいかないところに、大好きだった彼に振られてしまいました。その時は本当にショックで、一ヶ月間家から出ずに、どん底の気分で毎日泣いてばかりいました。でもある時、「これからこんな人生をずっと送るなんて嫌だ」と思ったんです。「人生一度きりしかないから、何か好きなことをやろう。そして、それを仕事にしよう」と思いました。それがきっかけで、料理を仕事にすることを決めました。
そうですね。もしあそこでどん底まで落ちなかったら、この仕事はしていなかったかもしれません。「やりたくないけど、周りもやっているから」という中途半端な気持ちで就職活動を続けてどこかの企業に就職していたら、まったく違う人生を歩んでいたと思います。落ちるところまで落ちたからこそ、這い上がるしかないと思えたんです。だから、今になってみると、「どん底を見るのも悪いもんじゃないな」と。これは、這い上がれたからこそ言えることなのですが(笑)
私も、常にポジティブだとは言えません。不安になることもたくさんあります。ただ、1度や2度挫折したからって死ぬわけではないし、いくらでもやり直せるということは、その経験で学びました。