演じる力
有限会社ミライズ / 営業シナリオライター / 片岡隆太
営業は、長く続けていれば成果がでる、とは限らないと思うのです。「一夜にして成功する魔法のコトバ」ではないにしても、売れるノウハウを知った人こそが成功するものだと思います。だとすれば、そのノウハウは誰が持っているのか?正解はもちろん、「売れている人」になるでしょ。でも、営業の世界って答えがあるようでないので、あまり具体的に検証して設計している人って少ないんです。「答えは俺の頭の中」というような長嶋茂雄さんタイプが多い。「来た球を打つ!」みたいな(笑)
そんな天才の頭の中にあるトークそのものを、オープンにして検証しましょうということなんです。和田秀樹さんの著書に、「数学は暗記だ」という本があって、毎回問題が違うものを暗記と捉えていることに、営業の成功ノウハウが似ているなと思い、「営業は暗記でできる!」というコンセプトを考えました。ノウハウのない人は、ノウハウのある人を真似る。そこがスタートですよね。
茶道、武道、芸術等における思想で、守破離(しゅはり)というものがあります。 まずは師匠に言われたこと、型を「守る」ところから修行が始まる。その後、自分にあったやり方を模索して、自分の型として「破り」、自分自身と技についてよく理解できるようになって、型から自由になり、型から「離れ」て自在になるという話ですね。
守るところからスタートして、各人がそれぞれに理解してお腹に落とし込んでいくことが重要です。
どんな世界も「型」ってあると思うのです。その型があって初めて自由になれるというか・・・。安心するというか・・・。 営業だって同じです。ただ闇雲に「行ってこい。」「売ってこい」ではキツいもの。 少なくても、お客様と対峙したときに最初の30秒ぐらいは、シナリオを覚えておいたほうが間違いなく安心です。 その型をお腹に落として、「想い」につながるんだと思います。
太陽と北風の話がありますよね。旅人に服を無理やり脱がせようとする北風ではなくて、旅人が暖かくなって自らコートを脱ぐように、「仕向ける力」が重要です。 そのためには、3つのステップが必要です。
まず、相手がどう思っているのかを徹底的に考えることです。いろいろな角度から、お客さんにとって何が価値ある提案なのか?と想像しつくすことが大切です。
次に、相手にどう伝えるかです。言葉として営業で伝えるのであれば、どんな言葉だと笑顔になるだろう?どんな言い回しだと、なるほど!と膝を打つだろうと、「演出」や「創作」を考えていくのです。
最後に、伝え方も重要です。情熱を持ちすぎて熱く語りすぎると人って引いてしまいがちですよね。そんな自分本位の伝え方ではなくて、「どうすれば相手に前のめりになって聞いていただけるか?」を考えてほしいです。
営業が必要かはわかりませんが、起業をする上で、「相手に想いを伝える」ということは絶対に必要です。数多くのブランディングプロジェクトを手がけている、アートディレクターの佐藤可士和さんは、著書の中で、「伝わらないということは、存在していないのと同じこと。」と話されていました。
僕の場合は、「これです!」という決めの一行がすぐに思い浮かぶタイプではないので、提供するサービスや商品を、全く知らない人が買ってくれるためのトークをシナリオにします。見せるのは少し恥ずかしいのですが、研修や講演を依頼されると、その時の風景を絵に書いてみたり、下手な漫画にしてみたりもします(笑)言葉と風景をリンクさせて。そこでできたシナリオを、お腹に落とし込んでいます。僕は、すぐに口から言葉がでてくるほうではないのですが、僕と同じような方は、この方法が遠回りのようで近道のように思います。そしてうまくなるためには、スピーチ力ですから、やっぱりロープレかなぁ。そうそう、ロープレは、歩きながらするといいですよ。歩くスピードで話のスピードが調整されますし、脳が活性化されますから。ぜひお試しください。
月並みですが、喜びの声をもらうと嬉しいですね。中でも、「想いが言葉にできました。行動に疑いがなくなったのが嬉しい。」みたいな感想をいただくと、思わず胸がぐっと熱くなりますよね。
僕自身、大きな成果を上げていたころは、行動に全く疑いがなかったです。でも、疑いのあった頃は・・・、相手の役に立つという感覚よりも、営業ノルマのための行動だったと思います。自分のやっていることに「誇り」を持てない営業マンが多い中で、気持ちよく営業してくれる人が、増えるのは本当に嬉しいことです。
よく、「企業には、ミッションが必要だ。」と言われますよね。
これが頭の中だけにぼんやりとあるのではなく、どんな状況であっても口から自然と出てくるように台本化することが、僕の大きな目的です。
ですから、ホームページや名刺や自己紹介チラシなんかに、その人の想いを紡ぐような言葉が完成して、胸をはって気持ちよく営業されている姿を見るとめちゃくちゃ嬉しいです。 決して大きな一歩でなくてもいいと思います。「半歩前へ!」の精神で、少しでも成長の角度がついてくれれば嬉しいです。