失敗と主観からみえたプラットフォームの在り方
Peatix Inc. / CEO 原田卓
米国イェール大学卒業後、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント、アマゾンジャパン合同会社、Apple Japan合同会社、Yoox Japan株式会社を経て2011年にPeatixを創業。
元々、『いつか起業してやる』という強い志があったわけではないのですが、起業の背景には、いつか大きなシステムとか枠の中を飛び出して、自分らしく自由に生きたいという思いがありました。
30歳くらいのときに、AmazonやAppleのような外資を転々とするキャリアパスが、すごく具体的に見えてきた時期があって、自分としてはそんな確定した未来が恐ろしく感じてしまいました。やはり人生は一度なので、失敗してもいいからその枠から外れてみて、自分たちだけで何かゼロから作り上げる体験や経験、チャレンジがしたかったのです。
実は、サービスを打ち出しては、失敗して引っ込めるというのを2、3度繰り返しています。
1つ目は、今の『note』に近いもので、 誰でも書き物を販売できるサービスでした。アイデア自体は素晴らしいものだったと思うのですが、当時の我々にはエクセキューション(実行)能力がありませんでした。
2つ目が、レコード会社の権利が及ばないライブ音源や、メジャー契約していないアーティストの音源を、自由に配信できるサービスです。ある程度利用されはしたのですが、どんなアーティストでもSpotifyやAppleMusicで音源を配信できるような仕組みができたので、今思うと、早い段階で撤退したのも正しい判断でした。
その後、アーティストのお手伝いをしている中で、チケッティングの非効率さに気が付きました。チケッティングをプラットフォーム化したサービスがあったら面白いし、アメリカでも同様のプラットフォームが出てきていたので、日本でも展開しようということでPeatixを立ち上げました。
そうですね、インターネットに衝撃を受けたのが大きいと思います。
アメリカの大学に行っていたときに、寮の部屋からインターネットにアクセスできたのですが、当時の90年代にYahooやAmazonが出てきた衝撃を今でも鮮明に覚えています。こうした経験があったので、インターネットを使ってどんなビジネスができるかというマインドセットからは離れられませんでした。
これまでの失敗でも、今のPeatixでも一貫しているのは、自分と起業仲間は「個人のエンパワーメント」に強いパッションがあるということです。裕福な人をもっと裕福にすることや、大企業をもっと大きくすることには、おそらくまったく興味がなくて、個人の想いやクリエイティビティを実現させることに喜びを感じるのだと思います。
ビジネスの根幹にあるテーマがモチベーションに直結しているので、辛いことがあっても頑張れます。スティーブ・ジョブズも『起業は辛いことの連続なので、 興味があること、好きなことでないと乗り越えられない』という言葉を残しています。