自社の活性化を図りたい経営者の中には、ピラミッド型組織について以下の疑問を抱えている方もいるでしょう。
- ピラミッド型組織の基本とは?
- ピラミッド型組織のメリット・デメリットは?
- ほかの組織構造とは何が違う?
ピラミッド型組織とは、複数の階層が重なって構成され、上意下達の指令体系で運営される組織形態です。従業員が多い大企業や官公庁を中心に多数の組織が採用しており、日本企業の典型的な組織構造と言えます。
この記事では、ピラミッド型組織の基礎知識やメリットとデメリットに加え、他の組織構造との違いや活性化のポイントを順に紹介します。ピラミッド型組織の優位点を最大限に活用し、社員の生産性やモチベーションを高め、持続的なビジネス成長の実現を目指しましょう。
ピラミッド型組織に関する基礎情報
ピラミッド型組織は、従業員の多い大規模企業を中心に採用されている典型的な組織形態です。約5000年前の古代エジプト文明でも採用されていたと言われており、歴史の長い組織の構造として広く知られています。
企業の組織づくりを進める上で、基礎となるピラミッド型組織に関して知っておくべき基本情報は以下の3つです。
- ピラミッド型組織とは?
- ピラミッド型組織の種類
- ピラミッド型組織の特徴
企業の基本的な組織形態であるピラミッド型組織の要点を的確に把握しておきましょう。
組織づくりに悩んだり困ったりしている方は、こちらを参考にしてください。
» 組織づくりとは?企業を成長させる「強い組織」の作り方 | リーダーズアカデミー
ピラミッド型組織とは?
ピラミッド型組織とは、階層構造を持つ組織形態のことです。企業におけるピラミッド型組織では、社長やCEOが最上位に位置し、配下に管理職が複数の階層で配置されているのが特徴です。
階層が下がるほど構成員が多くなる人員の構成分布がピラミッドに似ている点から、ピラミッド型組織と呼ばれています。組織の構成員が多い場合に採用されるケースが多く、大企業や官公庁などの大規模組織で採用されています。
ピラミッド型組織は、古代国家から採用され続けている歴史ある組織構成です。
ピラミッド型組織の種類
ピラミッド型組織の階層の構成方法には、いくつかの種類があります。
階層構成は目的に応じて編成されやすく、同じピラミッド型組織を採用していても、構成内容は企業によって大きく異なります。一般的に採用されているピラミッド型組織における階層構成は3種類です。
階層構成の種類 | 構成内容 |
---|---|
業務機能別 | 開発・生産・販売などの基幹業務単位や間接業務単位で組織を構成 |
ビジネスエリア別 | 事業展開するエリア単位に組織を構成 |
ビジネス種別 | 運営するビジネス種別が複数ある場合に、種別単位で組織を構成 |
ピラミッド型組織の階層構成方法は多様であり、ビジネス運営の効率性や成果の出やすさを踏まえて選択されます。
ピラミッド型組織の特徴
ピラミッド型組織の特徴は、明確な階層構造と指揮命令系統です。
一般的に、階層ごとに役割や責任が設定され、上位の階層は下位階層に指示する権限を持つため、階層による力関係の違いは明らかです。例えば、同じ組織でも、部長・課長・係長などの階層が設定され、それぞれに職務が与えられます。また、力関係の違いから、基本的に上意下達の命令系統であり、統制が取りやすい組織構造でもあります。
組織づくりの方法論を具体的に知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
» 組織づくりの超具体的なステップ | リーダーズアカデミー
ピラミッド型組織における3つのメリット
ピラミッド型組織を採用していても、得られるメリットに気づいていないケースは少なくありません。しかし、企業の活性化を図る上では、採用する組織構造がもたらす利点を的確に把握しておくことが重要です。
ピラミッド型組織を採用した場合に得られるメリットは3つに整理されます。
- 責任の所在がわかりやすい
- 統制を取りやすい
- 管理者を育成しやすい
自社でピラミッド型組織を導入しているのならば、各メリットが適切に得られているかを確かめてみましょう。
メリット1:責任の所在がわかりやすい
ピラミッド型組織のメリットの1つは、責任の所在が明らかな点です。
企業がピラミッド型組織を採用した場合、組織の各階層に役割や責任が設定されます。例えば、プロジェクトの遅延が発生した場合、担当の組織や管理職が問題の原因を迅速に特定し、適切な対策を講じやすくなっています。つまり、特定の業務内容に関して誰が対応すべきかが判断しやすく、対処の迅速化や問題の放置を回避できる点がピラミッド型組織の利点です。
ピラミッド型組織は、責任の所在が明確であるゆえに、効率的な業務運営や迅速な問題解決を進めやすくなるメリットが得られます。
メリット2:統制を取りやすい
ピラミッド型組織の2つ目のメリットは、上位者の方針に基づき組織全体を動かしやすい点が挙げられます。なぜなら、ピラミッド型組織では、明確な階層構造で組織が構成されており、上位層が下位層を統制する権限が与えられているためです。
例えば、大規模なプロジェクトで上位の管理職が責任者として参画すると、プロジェクトの構成員が大所帯でも意思統一した動きが取りやすくなります。活動方針や進め方に一貫性を確保できると、組織全体の活動も効率的になり、スムーズな目標達成が望めます。
ピラミッド型組織ならではの統制性は、従業員の多い企業が自社組織をまとめたいケースにおいて効力を発揮するのが特徴です。
メリット3:管理者を育成しやすい
ピラミッド型組織を構成していると、管理者を育成しやすいメリットも生まれます。
ピラミッド型組織では、複数の階層構造が構成され、それぞれの階層に下の階層を管理する社員の配置が必要です。特に、階層が多ければ管理職も必然的に増やさなければならず、結果として多くの社員が管理職を経験する機会が生じます。また、各階層で管理者の経験を積むことで、管理者としてのスキルを段階的に習得できる点が、ピラミッド型組織ならではの育成の仕組みです。
ピラミッド型組織は、管理者を段階的に育成するための効果的な環境を提供し、自社の維持・成長に寄与します。
ピラミッド型組織における4つのデメリット
ピラミッド型組織には、さまざまなメリットがある半面、デメリットもあります。デメリットはメリットと裏腹の関係にあり、デメリットを理解した上で組織運営すれば、企業に及ぼす悪影響は制御しやすくなります。
ピラミッド組織が抱えやすいデメリットは、以下の4点です。
- 意思決定や情報伝達が遅延しやすい
- 社員の自立性が低下しやすい
- 組織が硬直化しやすい
- 中間管理職は負担が大きくなりやすい
デメリットが生じる原因を正しく捉え、デメリットが顕在化しないように、適切な施策を講じましょう。
デメリット1:意思決定や情報伝達が遅延しやすい
ピラミッド型組織のデメリットの1つは、意思決定や情報伝達が遅延しやすいことです。なぜなら、ピラミッド型組織ではさまざまな階層を経て情報が伝わる仕組みになっているためです。
例えば、緊急の対応が必要な場合に、現場の状況が経営層に伝わり、経営層から対応方針が現場に降りてくるまでに相当な時間がかかる場合があります。特に、顧客からのクレームなどビジネス運営の根本にかかわる問題への対応の遅れは、ビジネスの継続にも支障をきたすリスクすらあります。
ピラミッド型組織では、組織形態の都合上、意思疎通に時間がかかり、対応が遅延する恐れが内在する点に注意しましょう。
組織の中で情報共有が進まない理由や対処法が気になる方は、こちらの記事も参考にしてください。
» なぜあの社員は情報共有をしないのか?組織の情報共有が上手く行かない理由と対処法 | リーダーズアカデミー
デメリット2:社員の自立性が低下しやすい
ピラミッド型組織では、社員が枠を超えるなどの自立的な取り組みを起こしにくいデメリットもあります。
多くの階層が構成されている企業だと、最も小さい単位の組織(チームなど)ごとに責任や役割が明確に定義されている場合が一般的です。さらに、上位層からの指示に基づいた行動が最優先され、社員が自ら考えて行動する機会が限定されてしまうケースも少なくありません。そのため、社員は事前に決められたことや指示されたことのみに注力し、所属組織の枠を超えた自主的な仕事に取り組む意欲が削がれやすくなります。
社員の自立性が育まれないと、企業は対応力や成長力が欠けてしまい、市場競争力が低下してしまいます。
デメリット3:組織が硬直化しやすい
ピラミッド型組織だと、全体最適ではなく、階層ごとに構成される組織の個別最適化が進みやすいデメリットも無視できません。なぜなら、小さな単位のチームごとに与えられた目標の達成が優先され、近接する別のチームの都合を勘案する必要性は必ずしもないためです。
特に、同じ組織形態が長年続いていると、所属組織の目標や都合を優先する働き方が定着しやすくなります。しかし、もし市場が大きく変化した場合、従来の価値観や仕事の仕方を変えるのが困難で、変化に乗り遅れビジネス機会を逸してしまいます。
ピラミッド型組織は、内部組織の硬直化を招きやすく、変化の激しい市場だと生き残るのが難しくなってしまう恐れがある点を考慮しておきましょう。
デメリット4:中間管理職は負担が大きくなりやすい
ピラミッド型組織だと、上下の階層に挟まれる中間管理職の負担が大きくなりやすい特性もあります。
ピラミッド型組織のように階層が多いと、最上位と最下位の階層以外は、上下の階層に挟まれる中間管理職を多く生み出します。中間管理職は、上司からの高度な成果の要求や依頼への対応に加え、配下の所属社員の支援や指導、場合によっては突き上げへの対応が必要です。まさに板挟みの環境が生じ、ストレスや過労のリスクが高まりやすい立場に中間管理職は置かれます。
ピラミッド型組織には、中間管理職への大きな負担が原因で幹部候補社員が流出したり、現場社員の昇進意欲を低減させたりするリスクがあります。
ピラミッド組織とほかの組織構造との違い
企業が採用する組織構造には、ピラミッド型組織以外にも複数の構造があります。ピラミッド型組織以外で、企業が採用しているケースが多い組織形態として、以下の2種類が挙げられます。
- フラット組織
- マトリックス組織
各々の組織形態の特徴や得手不得手を把握し、自社に最適な組織のあり方を見いだしましょう。
ピラミッド組織とフラット組織の違い
フラット組織とは、階層を極力減らし、社員が比較的同じ立場で働く組織形態のことです。企業内コミュニケーションを円滑にして意思決定を速め、迅速な対応に重点を置く企業が主に採用しています。
ピラミッド組織とフラット組織の違いは以下のように整理されます。
特徴の比較 | ピラミッド組織 | フラット組織 |
---|---|---|
採用ケース | 大規模企業・官公庁 | 小規模企業・スタートアップ企業 |
階層 | 多い | 少ない |
意思決定 | 上位層からの指示 | 現場の意見を尊重 |
統制 | 上位層主導で管理 | 現場社員が独自判断 |
変化への対応 | 遅くなりがち | 早く・柔軟に対応 |
組織の一体感 | 管理組織単位(事業部など)で 分断しやすい | 全社員がまとまりやすい |
管理に重点を置きたい場合にはピラミッド組織、迅速で柔軟な対応を重視したい場合にはフラット組織を選択しましょう。
ピラミッド組織とマトリックス組織の違い
マトリックス組織とは、企業が管理する軸の中から2つ(例:事業部と業務機能)を組み合わせた組織形態のことです。ピラミッド組織における上下の階層構造に加え、業務機能などで企業を横串で管理する構造を有しています。
特徴の比較 | ピラミッド組織 | フラット組織 |
---|---|---|
組織構造 | 上下の階層構造 | 縦横の2方向からなる複雑構造 |
指示系統 | 一方向(上から下へ) | 二方向(上下と横断) |
情報伝達 | 上層部から下層部へ | 上層部から下層部へ 同じ機能部門で横断的に |
管理のしやすさ | 基本的には上下の管理のみで容易 | 上下・左右の同時管理で煩雑 |
社員の役割 | 単一の役割 | 複数の役割 |
上意下達の指揮系統を確保しつつ、組織の個別最適化を防いだり、変化への柔軟性を高めたりしたい場合には、マトリックス組織の採用も検討しましょう。
ピラミッド型組織の活性化に必要な3つの要素
ピラミッド型組織を的確に運営するには、デメリットを抑制しながらメリットを最大化させる取り組みが肝要です。なぜなら、ピラミッド型組織を漫然と採用しているだけでは、メリットが顕在化せず、デメリットだけが目立つ場合があるためです。
ピラミッド型組織を採用する企業が、組織活性化の目的に取り組むべき要素は以下の3つに整理されます。
- リーダーの育成
- 組織に応じた役割の明確化
- 階層を超えたコミュニケーションの実施
市場競争で勝ち残り続けるために、ピラミッド型組織の継続的な活性化を図りましょう。
活性化要素その1:リーダーの育成
ピラミッド型組織では、継続的なリーダー育成が大切です。
前述のとおり、ピラミッド組織だとさまざまな単位の組織におけるリーダー、つまり中間管理職を多く配置する必要があります。もし、中間管理職が不在になると、当該組織の管理が行き届かず、必要な成果が上げられない恐れが出てきます。そのため、絶えずリーダー育成を進めて、中間管理職の枯渇による組織の機能不全を回避することが重要です。
リーダーの良し悪しは所属社員のモチベーションや組織の結束力、強いては組織のパフォーマンスに影響します。継続的なリーダー育成でビジネス型組織を活性化し、持続的なビジネス成長を実現しましょう。
できるリーダーになるために満たすべきポイントを知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
» 【永久保存版】できるリーダーになるための10のチェックシート | リーダーズアカデミー
活性化要素その2:組織に応じた役割の明確化
ピラミッド型組織では、組織間で責任や役割を明確にしておくことも大切です。
例えばトラブル発生した際に、関連するチームが複数あると、それぞれがけん制し合って問題解決が進まない場合があります。企業の不祥事の原因として、対応する組織が不明瞭で問題が放置されたことが報道されるケースは少なくありません。そのため、組織全体が効率的かつ適切に物事にあたるには、事前に組織単位で責任と役割を明示しておき、業務の空白地帯を生まないことが必要です。
企業全体で最適化されるよう、組織ごとに責任と役割を適切に割り当て、確実なビジネス目標の達成を目指しましょう。
活性化要素その3:階層を超えたコミュニケーションの実施
ピラミッド組織では、通常とは異なるコミュニケーション機会を意識的に設けて、社内で共有される情報の統一度を高める必要もあります。
階層が多いピラミッド組織だと、上位層の考えが現場に正しく伝わらない、現場の悩みや困りごとが上位層に伝わらないことは日常茶飯事です。適切かつ迅速に情報が伝わらないと上位層は正しい意思決定ができず、現場も必要な業務が進められなくなり、会社全体に誤解や不満が広がります。そのため、上位層が意識的に階層をまたいで情報交換する場などを設け、通常とは異なるコミュニケーションでの情報の周知徹底が大切です。
企業全体で円滑に情報連携する取り組みを繰り返し、組織の一体感を高め、社員が一丸となって目標を目指せる環境を整えましょう。
企業の活性化要素は組織構造以外にもある
企業の活性化において、組織構造の選択は重要な要素の1つに過ぎず、他の要素も合わせて取り組むことが重要です。例えば、企業の活性化を進めるフレームワークとして「組織の7S」が挙げられます。
ピラミッド型組織を含む組織構造は、以下のとおり活性化のために必要な検討領域の1つです。
「組織の7S」の種別 | 「組織の7S」の内訳 |
---|---|
ハードS | Strategy(戦略) Structure(組織構造) System(制度・手順) |
ソフトS | Shared Value(共通価値観) Skill(企業能力) Staff(社員) Style(企業文化) |
重要なのは、組織構造は残りの6領域の内容を踏まえて検討されるべきであり、組織構造のみで検討しても十分な活性化が望めない点です。そのため、組織構造だけに着目するのではなく、さまざまな要素との関係性を勘案して、的確な組織構造を整備しましょう。
ピラミッド型組織を活用してビジネス成長の基盤に
ピラミッド型組織は、階層を重ねた組織形態であり、従業員が多い大企業や官公庁で採用されている組織構造です。上意下達の指示系統が徹底され、統制を取りやすい反面、階層が多いと情報伝達に時間がかかったり、社員の自立性が高まりにくかったりする欠点もあります。また、ピラミッド型組織を活性化するには、継続的なリーダー育成や階層を超えたコミュニケーションが重要です。
ピラミッド型組織のメリットを最大限に引き出して企業を活性化し、持続的なビジネス成長を実現するための基盤にしましょう。
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【監修】
黒田 訓英
株式会社 ビジネスバンク 取締役
早稲田大学 商学部 講師
中小企業診断士
早稲田大学商学部の講師として「ビジネス・アイデア・デザイン」「起業の技術」「実践起業インターンREAL」の授業にて教鞭を執っている。社長の学校「プレジデントアカデミー」の講師・コンサルタントとして、毎週配信の経営のヒント動画に登壇。新サービス開発にも従事。経営体験型ボードゲーム研修「マネジメントゲーム」で戦略会計・財務基礎を伝えるマネジメント・カレッジ講師でもある。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。日本ディープラーニング協会認定AIジェネラリスト・AIエンジニア資格保有者。経済産業大臣登録 中小企業診断士。